復興支援事業 ふくしまバトン

人を紡ぐ・いのちを紡ぐ

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自殺率(SMR)が伸びている。あるいはこういう記事もありますね「仮設住宅で5年で190人孤独死 年々増加 7割が男性」。
男性になぜ孤独死が多いのか。震災を直接的な原因として亡くなった方と、それから関連死とは、命は災害をくぐり抜けて助かったけれども、避難所を転々とするうちに、あるいは友人のお宅を転々とするうちにどんどん心が弱っていって、ひいては持病が悪化して亡くなってしまうケース。福島大学の2011、12年の調査で「あなたはこの2年間で何回転居、引っ越しをしましたか?」最も多かった回数は48回です。2年間で48回も引っ越しをしたらばどうですか…。引っ越しを経験したことある人はわかりますが、心身ともに疲れ果てますよね。そしてさらに福島の場合、自分たちの故郷に仮設住宅を作ることができなかった、あるいは復興公営住宅を作ることができなかった。つまり遠く離れたところ、例えば郡山市は原子力発電所があった所から60キロぐらい離れている町の仮設住宅に住まなければならない。そうすると道の名前は分からない、どこに何が売ってるかお店も分からないという中で、外に出るのも億劫になって、引きこもりになって、鬱病になって、そして自ら命を絶ってしまう。
震災関連死ですね。これは人災ですから、死ななくてもいい命なわけですよ。

だから熊本の若い仲間の皆さんに、僕はあえてお願いしたいと思うのは、なぜ震災関連死が熊本では震災による直接死よりも増えたのか。これを明らかにして欲しいということです。
先日も熊本で国(内閣府)のシンポジウムがありましたが、外部からの研究者や実務家、災害支援の人たちがその原因を明らかにするんじゃなくて、熊本の人たちが明らかにして、自分たちの教訓とか知恵にしていかなければいけない。
熊本日日新聞の社員の人たち向けに話をしに行ってきました。そこでも是非マスコミ・新聞社の力で調査をしてほしいと言いました。君達もそうです。中学生の諸君、自分たちの故郷のことですから、故郷でなぜ死ななくてもいい命が亡くなってしまったのか。将来のまち作りに活かすためにも、そういうことを是非学んで自分たちで学習を続けて欲しいと思います。

震災関連死

括弧内の数字。岩手県は直接死と関連死を足したうち、関連死はどのくらいかというと8.9%。宮城は8.8%。福島は56%。今は58%ぐらいになっています。
こういう数字を見ると、岩手、宮城が8%台に対して、福島は50%を超えているんです。もう東日本大震災という同じ災害では括って見ることができないんじゃないですか。
異常な数字ですからこれは。死ななくていい人がなぜこれほど死ぬのか、私の研究テーマもここにあって、どうやって震災関連死を防ぐのかです。

災害を人権の視点で捉えなおす

つまり生まれてきてよかったという人生を送れなかったんですよね。ということは災害を人権の視点で捉え直していくってことが必要になります。
人権とは難しい言葉ですね。中学生の皆さん。人権というのは生まれてきてよかったと言えるような人生を、誰もが送ることができる権利及び自由のことを人権と言うんです。生まれてきてよかったと言えるような人生。
この会場には男性も女性もいますけども、男性として生まれて、あるいは女性として生まれたことで、わたしはなぜこの性に生まれついたのかって思い悩む人たちがいたならば、それはすなわち人権の問題になるということですよね。あるいは肌の色が違う。私はどうしてこういう肌の色に生まれついてしまったのかと思い悩む人がしたならば、それはすなわち人権の問題になる。あるいは自分の出生地ですね。自分はなぜあそこの土地に生まれなければならなかったのか、と思い悩む人がいたならばそれもすなわち人権の問題です。
「なぜ私たちだけがこうした災害を受けなければならなかったのか」というふうに思い悩む人たちがいるから、災害を人権の問題として捉えていく必要があるんだっていうことですね。
その時に大事な力はイマジネーション、想像力です。ある動画を見てもらいます。健常者と障がい者が逆転した世界。

想像力ということ
見方を変えるということ

街中ですね、健常者は一人。周りは全部車椅子の人たち。この人は戸惑っています。
役所に行きました。この人は言葉で話をするんだけども、役所の人は手話なので通じない。道がスロープになっている。車椅子は皆スイスイと上っていくけれども、健常者は滑って転びそうだ。
車いす用の高さに合わせた公衆電話、かけづらく体を縮めて使っていると、それを見た車椅子の少年が指を指して笑っている。これは図書館です。この人は本を探しているけども、蔵書が全部点字の本だ。読めない。
どうですか。健常者にとって当たり前だと思ってることが、立場が変わってしまえば全く別の見え方ができる。そこに働く力が想像力ってことなんじゃないですか。

環日本海・東アジア諸国図

日本地図。この地図見たことがありますか。初めて見るって人どのくらいますか。そうですか。これは環日本海・東アジア諸国図て言って、富山県が作っている地図です。
どういう地図なのかっていうと、大陸から見た日本の姿なんですね。私たちが普段見慣れている日本地図っていうのは、これを90度ひっくりすといつもの形になりますけれども、つまり大陸側から見た九州、四国、本州があって北海道があって、ここは日本海ですよ。日本海がこういう風にして見るとどう?まるで内海のように見えないですか。
そうですよ、大陸から見た日本ってこう見えるのかって、だから日本人の起源には様々な学説があってまだ定説が無いって言われてますけども、僕は歴史の専門でも何でも無いですが、この地図をずっと眺めてるとどうですか。
その昔…日本人の起源ですよ。この朝鮮半島から九州や中国地方に渡ろうとする人が絶対いたなって。そんなことが想像できたりする。あるいは大陸からこの樺太に渡って北海道に渡ろうとする人がその昔いたんじゃないのかって容易に想像させてくれる、つまり立場が変われば見え方もまったく変わっていく。それが働く力が想像力ってことなんだ。
熊本、岡山、福島の子供たち。この想像力というものが、この先、もちろん学校生活の中でも社会に出て仕事を持つようになってからも非常に大事なものになります。何も仕事だけじゃなく家庭の中にあってもそう、この想像力つまり、あの人はなぜああいうこと言ったのかなって考えてみる力、想像力、それを本当に鍛えてほしいと思っています。

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