復興支援事業 ふくしまバトン

人を紡ぐ・いのちを紡ぐ

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大切なのは自治

自治をどうしたらいいのかということで、足湯とサロンから交流の場を作り出していった。その交流と自治を保証し続けていくための仕組みが必要だということで作ったのが、「おたがいさまセンター」という機関です。避難所の中でお互い様センターを立ち上げて、私は二年間そのセンター長も兼務をしていたわけです。このおたがいさまセンターは、避難所が閉じられてからも生活復興の拠点が必要だということで郡山市にこういうセンターも出来ました。

おたがいさまセンターの取り組み

約100坪の小さい建物ですね、それでも年間の利用者は4万人を超えています。人々が心を交流させる駅のようなそういう場所です。

災害とは何か

これもまとめの一つです。東日本大震災あるいは熊本の地震でも同じ事が言えたわけですけど、いくつかあるわかったことは、普段準備している以上のことは絶対できないということです。それからもう一つは災害が起きて次々といろんな問題が新たに発生するわけではないということです。元々あった地域の、自分たちのまちの課題が災害が起きたことで浮かび上がってくるだけなんだって、この二つですね。
では災害に強いまちとはどういう町のことを言うのでしょうか。一言で言えば人と人と繋がっているまちのことを言うんだよね。

例えば熊本地震の時に、熊本に入ってその日のうちに東区の避難所を見て、益城に行って、御船に行って、西原に行って、断層上の被害も見ました。同じ日ですよ。
東区、人口密集地の避難所は大変で、益城に行ったら余計に大変、御船もね、西原の布田川断層の集落も全滅でしたね、被害の程度からしたら西原も本当に酷かったんじゃないか。でも全国ニュースによく出ていたのは益城とかでしょ、体育館が大変ですとか、マスコミの皆さんは言い方は悪いですが一番絵になるところ、つまり酷いところを映し出す訳ですから。酷さや被害で言ったら西原はその地域全滅ですもんね布田川断層のところ。
同じ日に東区から益城、西原へとずっと巡って、西原の避難所がなんだか不思議なんですよ、何が不思議かって言うと、整然としてるんです。中には笑顔さえ浮かべている人もいる。
なぜなのか…。益城では怒鳴り声も聞こえた。同じ日にですよ。ちょっとお話を聞いたらすぐわかりました。西原は元々地域の結びつきが強かった。益城などは言ってみれば新興住宅地です。分かりますね、コミュニティの力が薄かったわけです。
災害に強い街とは、人と人とが繋がっているまちことを言うんだって。

ところで防災のまちづくりってあるけど、本当は必要ないんじゃ無いですか?だって防災のために人と人とが繋がるわけじゃないですよね。元々人と人とは繋がってなきゃいけなかった。それを災害支援の世界の中では「結果防災」という考え方で呼んでいるんです。
普段から人と人とが繋がっていて、それが結果として防災のまちになる、結果として福祉のまちになる。そういう有り様を作っていきましょう。結果防災ですね。
元々人と人とは繋がっていなければいけなかった。
地域(避難所)における
コミュニティ形成

避難所におけるコミュニティ形成。難しい言葉、中学生の諸君大丈夫でしょうか。コミュニティ人と人とのつながりをどうやって避難所の中で作っていくかっていう視点です。
避難所という単語を地域、すなわち熊本、岡山、福島に置き換えても同じ意味です。
縦糸・横糸て説明します。横糸が交流の場の提供と自治の活動の促進。縦糸は命を守るということです。
さっき言いましたね、地域の名簿を作りましょうよって、地域の中にどんな人がいてどんな状態でいるのか、二軒隣には老夫婦がいて、お爺ちゃんは88歳で糖尿病からくる腎臓疾患で人工透析を週3日受けてますとか、障害者手帳は何級で管理してるのが84歳のお婆ちゃん、お二人とも元気だけどもいざ何かあったら大変だ。あるいは斜め向かいのお宅には障がいをお持ちのお子さんがいて、それを若い夫婦が育てている、そういう家族がいる。普段からそういった情報が地域の中で共有されていれば、何かあった時に「ああそうだ、あそこは大丈夫かな」ってすぐそこに想像力が働くわけですよ。まさにそういう地域の中の名簿を作っていく。まさに命を守る活動ですよね。

そして生きがいと居場所づくり、公民館などでもよくやってますよね。陶芸教室やコーラス、教育や環境問題など学習講座をやったり、そういった生きがいとなり得る場所を地域の中に作っていく。これを縦糸にしていく。

コミュニティ意識の醸成

この横糸と縦糸が織りなしていくものは何ですか。住民間のつながる力なんだ、そしてそれがやがてコミュニティ意識、人と人とが繋がる意識というものが育てられていくんですよ。そういうことですよね。これは岡山だろうが熊本だろうが福島だろうがどこでも通じる共通の視点だって思ってます。

孤独死との戦い ― 市民との協働

孤独死との戦い(新聞記事) 

これは福島の新聞記事『仮設孤独死34人 年々増加 8割が男性』。次に20年前の新聞です。『西宮復興住宅 孤立死1年8ヶ月も 家賃滞納明け渡し 強制執行時に発見』
実は最近の東京の新聞にも同じような記事があります。『高齢者、相次ぎ孤立死か 民家や都営住宅に遺体』。東京は被災地じゃ無いですよね。つまりこういう例は枚挙に暇が無い。

被災地・福島の教訓

コミュニティが崩壊してしまった地域があるということ=人がバラバラになってるということなんですね。人がバラバラになっていること=寂しいと人は死ぬということですから、さみしくさせないために、交流と自治が大切だ、これは今も話しした通り、なにも被災地だけじゃ無い、全国でも同じ課題があるんじゃないですかってことなんです。
全国のどこでもいいですよ、群馬県でも香川県でも、朝起きて、今の時間まで…想像して、一人ぼっちでいた人はいないんですか。いるでしょう。たった一人でご飯を食べて、たった一人でテレビを見て、たった一人でお茶を飲んでる、それが毎日だって人はいないのですか?いるでしょう。
だとしたら、我々福島あるいは熊本は災害が起きて、一人ぼっちだったら人が死ぬんだということが分かった。けれどもこれは全国でも同じ課題がある!じゃあどうしなければならないのか。人と人とが繋がっていく仕組みを作っていくしかないんだってことですよね。

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