復興支援事業 ふくしまバトン

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自治(会)は、なぜ必要か

これは週刊誌の記事ですね。タイトルは「俳優の夫妻がご近所トラブルを起こしている、そこから浮かんだこと」。このご夫婦は町内会に入らなかった。それで町内会長が困っていると。「だが、加入はあくまで任意だ。入る必要性やメリットはどれほどあるのだろうか」と続きます。これは教材にちょうどういいですね。
自治とか自治会はなぜ必要なのかということを、君たちとも考えてみたいと思います。
これね単純なんです。命を一人では守れないからですよ。本当にシンプル。
人間はつながることで生きてきた。それは歴史が証明している!最初にお話ししましたよね、人は一個の動物としては非常に弱い、競争原理は原理では無いって。

京都大学霊長類研究所の最新の研究です。あそこはチンパンジーも研究してるんですが、ヒト科の人もチンパンジーも霊長類。約600万年から700万年前ぐらい前に枝分かれをしてきたと言われていて、チンパンジーは人と同じ霊長類なのに五年に一回しか子供を産めない。ところがヒト科の人はどうですか、理論的には毎年でも子供を産むことができますよね。年子って言葉もありますもんね。
同じ霊長類なのになぜなのか?調べてわかったことは、チンパンジーの母親は子供につきっきりで子育てをする。チンパンジーが一人前になるのには約五年弱かかり、つまりそこまで付きっ切りで子育てをしているというのが分かった。
では我々人間はなぜ毎年でも子供を産むことができるのか、それは人は集団で子育てをしていたってことがはっきりわかったんです。
つまり人と人は種族としてもともと繋がるようになっていたんですね。わずか100年弱の間に子育ての姿が変わってきてしまいました。
ひとりぼっちとか家族ぼっちとか、親子ぼっちで子育てをしているっていうところが増えている。そういうところに問題があるわけです。

じゃあ君たちは、中学生の諸君もいるけれども、自治会というのはなぜ必要なのか、つまり、学校ならば生徒会というのはなぜ必要なのか、学生自治会はなぜ必要なのかって、共通するのでこれを最後にお話しして終わりにしたいと思います。

自治会の機能と役割

自治会に入るメリットって言ったときに、自分たちにも置き換えて考えてください。個人のメリットだって勘違いしてる人が結構いるんだなということに気付いたんです。
町内会に入ったらば、個人のメリットとして10万円のキックバックなんかあるわけないわけですね。町内会に入るメリットとはどういうことなのか自治会に入るメリットとはどういうことなのか。
たとえば通学路があります。防犯灯がある。たまにチカチカしたり切れていたりする。そういう危険な道を歩きたいと思いますか?嫌だよね、そうでしょ。その防犯灯は誰が見てるんですか。あれは町内会の人たちが見るって役割になっています。役所の人なんか見ませんよ、だって役所にはあれしか人が居ないのに地域の防犯灯なんか全部見られるはずがないわけです。
あるいはみんなが住んでる街が、ゴミが散乱した汚い町に住みたいですか?誰もが嫌ですよね。福島の中でごみステーションなんかありますね。ゴミをためておく場所。これは誰が管理していますか。町内会の人ですよね。当番を決めてみんな掃除したりしています。
そう、自治会や町内会に入るメリットは個人のメリットではありません。自分たちの地域が安心で安全なものであるための、自らの地域を住みよい地域にするという意味において大きなメリットがあるんですよってことなんですね。
君たちも自治ということについて今日持って帰ったら、是非考えて欲しいと思っています。

私たち自身が問われている…

最後に私たち自身が問われている結論です。それは地域でどう生きるかということです。
君たちが自分の故郷で熊本で岡山で福島で生きていく、あるいは別の地域に行くかもしれない。その地域でどう生きていくかということが問われている、それはつまりはどういうことかというと、生きがいと死にがいという言葉で説明できます。

生きがいとは生きる目的ですよね、個人のものですあくまでも。釣りが生きがいだとか、子育てが生きがいだとか、囲碁将棋が生きがいだとか。その個人の目的に対して死にがいという言葉がある。
そう君たちのお父さんやお母さんがね、この街で子供を産んで、この街で生活をしてこの街で仕事をして、その先は俺はこの街で死んでいきたいなって、余所のまちなんかで死ぬのは嫌だって、俺はこの故郷で死にたい。死にがいのある街です。
そういう街を作って次の世代にバトンを渡して行こうって、死にがいのあるまちづくりっていうのは、まちづくりの運動の中から生まれてきた言葉です。まさに死にがいのある町。生きがいは一人ですよ、でも死にがいというのはいろいろな人たちと手をつながないと作れない。
そういう死にがいのあるまちをつくって、次の世代にバトンを渡していきましょう。

今日はいろいろお話ししてきました。ここまで僕が一方的に喋ったからですけど、この後みんなが吐き出す場があるんですよね。

これは吐くという字です。これはくちへんにどうですか。分解して考えるとどういう字ですか。…その通りですね。くちへんにプラスとマイナス。
吐き出す場を創ると「どうしよう、自分たちの故郷を」「いやそんなこと言っても出来ないよ」と、プラスのことを言う人がいたりマイナスのことを言う人がいる。でもとことんまで吐き出すとどうなりますか?やがてマイナスが取れて「そうだよね…俺たちの故郷だからやっていくしかないな」って、プラスだけが残っていきます。
そうするとどういう字になりますか?皆さん。そう「叶う」っていう字です。どうですか僕、金八先生みたいに見えてませんか。(会場笑)
まさにこの後のシンポジウムの中で吐き出す場を十分に保証して、自分たちの思いをどうやって叶えていけば良いのか、そういうことを是非この福島で議論して欲しいと思います。

あっという間でした。ふるさとのことはふるさとにいる私たちが決める

ご静聴ありがとうございました。

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