教育

桜の聖母短期大学 芸術鑑賞会

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長唄三味線と日本舞踊

粋とイキ 「間と呼吸」

伝統文化に秘められた日本人の原点を観る

と き:2014年11月11日(火) 13時開演
ところ:マリアンホール講堂
構 成:伝統文化みらい協会

出 演

長唄三味線今藤流家元
今 藤 長十郎

今 藤 長龍郎
今 藤 長一郎
杵 屋 巳之助
囃 子堅 田 新十郎
藤 舎 推 峰
日本舞踊立方
花 柳 琢次郎

後見
橘   正 鳳

解 説

無拍のリズム

日本の伝統的な音楽には、洋楽のような指揮者はいません。
唄と三味線と囃子の多様な響き、またさらに踊り手が加わって創造される芸術は、西洋の論理的な秩序(等拍のリズム)とは異なり、演者同士が相手の呼吸(イキ)、間(ま)を読みとりながら拍を自在に伸縮(不等拍のリズム)して寸法を合わせ、ときには序破急を構成しながら楽曲の進行をあしらっていきます。この相手のイキを読みとっていくことは、日本人が古来より自然と培ってきた感性であり、阿吽の呼吸、以心伝心、コミュニケーションにおける相互信頼につながっています。
先の震災時にパニックも略奪行為もなかった日本人の調和的な態度は世界中を驚嘆させました。
その背景となった、言葉で全てを表現しなくても直感で分かり合える民族性は、伝統文化の中にも受け継がれ芸術として昇華されています。
無をゼロ(絶対的虚無)と見る唯物的な考えとは異なり、「無がある」とする日本人の思想や宇宙観は、無拍のリズムと心地よく共振します。
アメリカの作曲家ジョン・ケージが作曲した「4分33秒」と言う曲は、全楽章が休符のみで構成されています。これは音楽を停止することによって演奏者以外の環境音(演奏会場内外のさまざまな雑音)を聴くことが意図されました。
しかし日本人は演奏者が創造する無音を観ようとします。
邦楽の「間(ま)」は休符に似ていますが停止ではなく、その中で多くの情報が交換され無の表現がなされています。それを一期一会の空間の中で感じ取り共有することが文化として受け継がれてきました。
本日演じられます長唄三味線邦楽と日本舞踊をご覧いただくことを通じて、皆様が日本人のDNAとして内側に育んできた素養を再発見していただければ幸いです。最後に、日本の伝統文化をご紹介できる貴重な機会を与えて下さいました皆様に、心より御礼申し上げます。

演 目

一、 娘 道 成 寺
一、 吉 原 雀
一、 秋 の 色 種
一、 勧 進 帳
一、 越 後 獅 子

長唄(江戸長唄とは)

長唄は、江戸時代に歌舞伎の伴奏音楽として発展した、伝統的な三味線音楽の一ジャンルです。
義太夫節など叙事的な語りを中心とした「語り物」とは異なり、叙情的なリズム・メロディーによる唄を中心とした「うたもの」と呼ばれます。
演奏は基本的に複数人の唄と三味線で成り立ち、演奏には、繊細なメロディーを演奏するのに適した、音色の高い「細棹三味線」が使用され、曲目によっては小鼓、大鼓、太鼓、笛などで構成される「お囃子」が付きます。
今回演奏される「勧進帳」は、歌舞伎芝居に伴う楽劇としての長唄で、他に「越後獅子」のような舞踊の伴奏音楽としての長唄もあります。
また「秋の色草」は、演奏会用の長唄として、大名屋敷や武家のお屋敷などで演奏されたために「お座敷長唄」と言われます。明治以降には歌舞伎を離れた新しい趣向の曲が次々と作曲され、現在に至っています。
長唄の特徴は派手でリズミカルであり、様々な洗練された手法が駆使されるので、三味線音楽のデパートとも評されます。

歌舞伎の世界における長唄は二つの大きな仕事を担っており、一つは舞踊の為の演奏で、これは舞台に出て演奏する為、出囃子と呼ばれます。
もう一つはお芝居の効果音楽として役者の出入りや、心理描写、虫の音や自然の情景描写を表す演奏で、お囃子の太鼓で雨・風音を表現したり、幽霊の出るドロドロなど効果音としての役割も担います。これは客席から舞台を見て下手の黒御簾という場所で客席からは隠れて演奏するため、下座音楽、又は黒御簾音楽と呼ばれます。

長唄は本来一曲15分から長いものでは1時間以上の楽曲ですが、今回はそれぞれの特徴的な箇所をピックアップしてダイジェストで演奏いたします。

出演者紹介

長唄 今藤流 四世 家元
今 藤 長十郎

人間国宝三世今藤長十郎の三女。四歳で初舞台。日本大学芸術学部音楽学科作曲専攻卒業。昭和59年四世今藤長十郎襲名。家元継承。
同年から毎年京都宮川町「京おどり」を作曲。毎年の公演である、今藤長十郎「三味線の響き」主宰。「繭の会」同人。その他、長唄協会主催、東京新聞主催の長唄公演等に出演。
NHK(テレビ/ラジオ)等多数出演、海外公演多数(アメリカ、ヨーロッパ、アジア)など幅広く活躍。
現在、社団法人長唄協会常任理事、大阪芸術大学客員教授、国立劇場養成課講師、NHK文化センター(東京、大阪、京都)講師、東山女子学園教授など要職多数。
平成21年文化庁長官表彰。
平成24年より「東日本大震災復興支援長唄演奏会」を開催している。

今 藤 長龍郎

今藤尚之を父に、藤舎流笛家元藤舎秀蓬を祖父に、叔父に藤舎名生、中川善雄を母方の叔父にもつ。昭和60年、四世家元今藤長十郎師より今藤長龍郎の名を許される。
東京芸術大学音楽学部邦楽科卒業。以後NHK邦楽番組、洋楽番組、国立劇場、歌舞伎座、紀尾井ホール等に出演。
現在、長唄五韻会同人、現代邦楽作曲家連盟同人、創邦21同人、国立音楽大学非常勤講師。

今 藤 長一郎

昭和五十四年、今藤文子師に師事、長唄(唄、三味線)を学ぶ。
昭和六十三年、藤舎呂船師に師事、長唄囃子を学ぶ。平成元年、今藤長一郎の名を許される。現在、邦楽演奏会、日本舞踊公演、NHKテレビ・ラジオ等に出演。

杵 屋 巳之助

幼少より父・杵屋巳紗鳳について長唄の手ほどきを受ける。平成7年、杵屋巳太郎師に入門し三味線を習う。後、杵屋勝四郎師、稀音家助三郎師にも師事。平成10年、二代目杵屋巳之助の名を許される。東京藝術大学邦楽科別科卒業。以後、長唄協会演奏会はじめ各種演奏会、NHK、など各方面の歌舞伎公演等に出演している。

堅 田 新十郎

人間国宝・堅田喜三久の二男として生まれる。平成2年、大学卒業後に演奏活動を始め、平成10年に四代目・堅田新十郎を襲名。
現在は舞踊公演、歌舞伎公演のほか、テレビやラジオの世界でも活躍中。海外でも演奏活動を行っている。

藤 舎 推 峰

父は笛演奏家の中川善雄。祖父である藤舎流分家笛家元藤舎秀蓬(故人)、伯父の藤舎名生、そして中川善雄に師事。2004年伯父名生の前名である「推峰」を襲名。
東京芸術大学大学院音楽研究科邦楽囃子専攻修了。在学中に浄観賞、同声会新人賞、アカンサス賞を受賞。

花 柳 琢次郎

日本舞踊家花柳琢兵衛、花柳千加良の次男として東京に生まれる。日本大学芸術学部日本舞踊専攻卒業。
振付家、舞踊家として舞台テレビなど各方面で活躍するほか、高校、大学等の複数の教育現場にて非常勤講師を歴任。また芸道教育研究家として講演活動も行っている。花柳流本部役員。

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